人物の描き方

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締め切りより前にゲラを出す爽快感♬

先日、海上先生の次回作の企画会議で某徳間書店に行った時に、担当から「倉山さんは人物が乗り移るからなあ」と言われた。検証してみよう。

★三木武夫
→記念すべき、一人の人物の本を書いた最初。17の時から研究してきたけど、この年になると三木のえげつない部分を客観的に見れるようになった。どっちかと言うと、そのうち、「松野頼三視点」で三木の時代をやりたいなとも思う。

★織田信長
→本にするにあたって改めて調べなおすと、見えてなかったものが見えてきた。確かに感情移入して、書いている最中に評価が変わった稀な人物。なお、今の大河の「染谷信長」は怪演が話題だけど、実像にかなり近い。

★西郷隆盛
→5章中4章は「工作員」として描いたのだが、実は現在の学界の通説でもある。だから、大河ドラマがこの本の通りの描き方になる。そして第5章は自分でも気づかないうちに西郷が出てこない。書いている時から担当にも指摘されていたが、「だって工作員じゃないし」とか返事してた。(笑) そして、なぜか大久保の話になっていた。今までそんな伏線を張っていた訳でもないのに、最後の一文で泣けると評判。

★近衛文麿
→ぐちゃぐちゃな話をぐちゃぐちゃなまま出してみた。やっぱりぐちゃぐちゃに。(苦笑) だって、大嫌いなんだもん。(笑) まるで感情移入しなかった。むしろ迫水をもっと出したかったんだけど、肝心なところに限って史料が無いんだよなあ。どこぞの自称近衛研究家のように創作する訳にはいかないのだ。

★大久保利通
→本当に「大久保が乗り移ったよう」と言われた。確かに。4章からはかなりエキセントリックな本になっている。

★明治天皇
→前作(大久保)と同じ人物が同じ時代を描いたとは思えないほどトーンが違い落ち着いた上品な本に。人物が人物だけに乗り移るというのはありえない。担当からは「徳大寺実則を主人公にしてくれ」と無茶ぶりが来たが、無理なものは無理。誰か宮内庁にある徳大寺日記を全部読んだ人がいたら、その人にやってもらう方が良いかと。

★桂太郎
→大久保の次に感情移入したかもしれないが、乗り移りはしなかった。ただ、非常に書きやすい人物ではあった。ご遺族が桂の墓前に捧げてくれたのはありがたい。一生の誇り。

★ウッドロー・ウィルソン
→この人物に感情移入すると、即座に人格異常者認定。

★原敬
→次回作。あやうく好きになりかけたが、やはりくだらない人物だった。危ない危ない。それだけに、桂と逆に描きにくかったが。とはいうものの、人間の評価に100点も0点も無く、こいつのいいところを、政争家の部分以外で、発見できた。

検証結果。
本当に乗り移ったのは大久保くらいかな。