帝国憲法物語〜終章

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  本書はこの部分から書き始めた。

ある強姦魔の寓話


 ある強姦魔が、強盗に押し入り、一家の亭主を殺し、妻を犯した。
 そのまま強姦魔は家に居座り、妻や残された子供隊を支配した。貧困にあえいでいた一家を
金と暴力のアメとムチで支配し、幼い子供たちまで懐かせた。
 妻は何度も犯され、身も心も支配され、新たな子供を孕ませられた。強姦魔は厚かまし
くも事もなげに「結婚しよう」と提案した。巧妙に脅しながらも、紳士的な風を装って。
妻は旧夫を愛していながらも、泣く泣く婚姻届に判を押した。その後、新夫となった強姦
殺人魔を訴えることはなかった。真実は一家の秘密となった。
 妻は何も語らず、平穏な家庭を築こうと生活した。旧夫の子供たちも、生きるために真
実を知りながら押し黙った。
 そして強姦によって生まれた子供も成長し、旧夫の子供たちともども、孫、ひ孫まで持
つに至った。元強姦魔の夫は天寿を全うした。毎年必ず盆暮れには一家で墓参りを行な
い、先祖として霊を弔うのが一家の風習となっている。
 一方、孫やひ孫たちは、「旧夫は強盗強姦魔で、近所の人たちに迷惑をかけた殺人犯だ
った」と教えられ、蛇蝎の如く嫌いながら育った。その旧夫から妻を救ってくれたのが新
夫なのだと教えられ、信じている。
 今や、旧夫の一族も、新夫の子供から生まれた一族も、旧夫は悪魔、新夫こそ救世主だ
った、と信じている。
 そして、旧夫の粗末な墓に花が手向けられえることはない。また、墓標に刻まれている名
前は、長年の風雨と人の放置により判読できないほど汚されている。
 その名は、大日本帝国憲法。

 これは単なる寓話ではない。憲法論議の正体だ。
 この話を聞いて悔しくない日本人に、憲法を語る資格なし。

 なぜ、憲法の本でこんなに涙が出るのか?

帝国憲法物語

日本人が捨ててしまった贈り物

(PHP研究所)

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