図書と簿冊の違い~倉山工房研修(倉山塾掲示板)より

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最近の倉山塾は、ユニットを組んで勉強して、その成果を塾掲示板に投稿しています。それに対し私が書き込んだり、先に私が投稿することもあります。

ということで、今回は塾掲示板での投稿を公開。

↓↓↓

倉山工房と言えば私のアシスタントチームですが、
東京支部の1ユニットでもあります。
で、ユニット工房が何をやっているかと言うと、

歴代総理の辞表

を読み込んでいます。
東京支部のユニットとは、一緒に勉強をする単位(仲間)です。
勉強への参加希望者は最寄りの工房関係者か、東京支部関係者、両方とも知り合いにいないときは下記にレスを。

以下、今回は工房研修を兼ねてこちらに。

戦前の総理の辞表は公表されています。
平日の昼間に皇居の隣までいかなくても、アジ歴で世界中から24時間無料で閲覧できます。
原本は、国立公文書館所蔵の『公文別録』の中にまとめられています。

さて、この『公文別録』を「文献」と思った人は、初手から概念が間違っています。
アーカイブ(文書学)の基礎です。
図書館学や図書館情報学が図書(文献)を対象とするのに対し、文書学の対象は文字通り文書です。
図書は、定型(奥付)があり、出版を前提として複数存在します。
文書は、定型がなく、原本は原則として一つです。

たとえば、私が『満洲事変』で引用した
「依願免本官並兼官内閣総理大臣兼拓務大臣若槻礼次郎」
は『公文別録親任官任免』第六巻に収められています。

「公文別録」の一部が「親任官任免」で、その中に若槻の辞表がある訳です。
「公文別録」という文書群の中に「親任官任免」第六巻があるので、注の表記は
『公文別録親任官任免』第六巻
としています。

それはさておき、最初にあげた『公文別録』は図書(文献)かというのは、
『公文別録親任官任免』第六巻という文書の束は文献か?
という設問に置き換えてください。

図書と文書の定義を知っていれば、おわかりでしょう。
違います。
では、なんと呼ぶか?

簿冊

と呼びます。
図書(文献)と文書を集めたものである簿冊は、まるで違う概念です。
仮に『公文別録親任官任免』が図書として刊行されれば、話は別ですが。

文書学とは、こういう様式論を扱う学問で、
あらゆる歴史学者ができなければいけないのですが、
日本近代史家ではできる人を探すのが難しいのが現状。

様式論(フォーマット)を無視して、いきなり内容(コンテンツ)ばかり議論するから、
学問ではなく好事家(オタク)になってしまうのです。

「図書と簿冊の違い~倉山工房研修(倉山塾掲示板)より」への1件のフィードバック

  1. 「文書」を「ぶんしょ」と読むか「もんじょ」と読むかでまた意味が違ってくる。
    「公文書」をどう読むかで意味がまるで違うのと一緒だな…

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