最近、常連さんとも言うべき書き込みをしてくださる方々が増えて、ありがたいことです。ヴァーチャルな世界だと、どうしても誤解を招きやすいところがあるので、皆さん仲良く、明るく、楽しく、しかし激しく、熱いやりとりをしていただけるとこの上ない喜びです。
さて、まだお答えしていないレスに対する返信は、まとめて致します。
宛hnさん9月5日付・・・好きなレスラーはランディ。
涙なしでは見られない名作と評判のミッキー・ロ−ク主演『レスラー』のことですね。全然「ハリウッドエンディング」じゃなくて衝撃的なラストでしたけど、今の日本の出鱈目な格差社会を考えると、何だか他人事ではない映画でした。しかもこの映画、見た日に三沢光晴社長がお亡くなりになられたので、なお衝撃的でした。ちなみに、かの竹田研究会には名だたる経営者の方々が参加されているのですが、その懇親会で「何か話を」と言われてしたのが、「ミッキー・ロークと三沢光晴」でした。どんなに惨めに落ちぶれても「○○○○○○○○○○○○○○○○(ネタバレなので秘す)」というミッキーことランディと、自分の家を借金の抵当に入れてまで給料を払い続けた三沢社長、感じるものがないでしょうか。ちなみに『レスラー』って、実に梶原一騎的世界観で良くできた映画だと思います。
軽いネタかも知れませんが、以上はイギリス英語のpublicにふさわしいかなと。この辺りがギリギリの線でしょうね。明治時代を旧新日本プロレスにはちょっとたとえにくいです。
宛かしわもちさん9月6日付・・・明治と今の短距離走選手
よく保守系の論客が「明治憲法は当時にしては良くできていた憲法」という言い方をするのですが、私はこのモノ言いに極めて不満なのです。憲法における20世紀的価値観と言うと、「最も民主的なワイマール憲法」が模範とされるのですが、この憲法の良さが私にはさっぱりわからないです。最大1兆倍のインフレ下、右翼と左翼が機関銃を街中で打ち合って、警察も軍隊も見てみぬフリしかできなくて、あげく最後は全会一致でヒトラーに独裁権を与えて。しかもこれが合憲的合法的にできた訳です(明らかに非立憲的でしたが、ワイマール憲法自体が「非立憲」という概念を否定している)。こんな完全な欠陥憲法に合わせて立派がどうかをはかる時点で、ものさしがおかしいと思うのですが。ワイマール憲法や日本国憲法の条文の規定が、書かれているかどうか、という視点自体を疑うのが帝国憲法講義で訴えている重要な議題のひとつです。
もちろん、帝国憲法が万全の憲法であった、などということはありえないです。人間の作るものですから。特に自由民権運動対策を意識しすぎた、帝国議会の章など極端な規定が多いですし。ついでに日本国憲法の内閣の章は、憲政の常道を書き込まずに憲法習律として育てていくべきか、それとも書き込むべきかで日本側起草委員が悩んだ結果、書き込んだものなので、条文自体は絶対に直す必要があるか、と言われるとない訳です。ましてや首相公選制(大統領制)の導入など論外な制度に今の憲法典の当該部分を変更しようとするならば、私はこの限りにおいて護憲派です。
いずれにしても、「明治憲法は当時にしては」云々という発想の根底にある価値観を問い直さねばならないことだと思っています。これは決して政治家や実務家にはできないことであり、私のような立場の人間の使命だと思っています。
宛かしわもちさん&QOLさん・・・ハワイのことども
米国は元々別の国なので、50分割?昭和十六年十一月二十六日にハルノートを突き付けられたとき、「だったらアメリカはハワイをカメハメハ王朝に返せ!カリフォルニアをヨハン・ズーターに返せ!そもそもアメリカ大陸を原住民に返せ!」と言い返せば良かったのである。それくらい無礼な、およそ真面目な外交交渉とは思えないような要求を突きつけてきた訳であるので。ただ錯乱して、絶望のあまりに陸海軍以上に対米戦を主張し始めた東郷外相、単なる無能者としか思えないのだが、なぜか美化されている。
ハルノートを突きつけられたら、「これは日本に明治維新以前に戻れというに等しい要求である。よろしい。ではあなた方はメイフラワー号に乗って本国にお帰りなるが宜しい。他人から奪った物は返さねばならないならば、アメリカ合衆国の領域すべてを原住民にお返ししなさい。これは一九二八年ケロッグ条約以前に獲得したかどうかではなく、人道の問題である。貴国が文明のために勇気ある決断を実行されたと確認できた上で、我が国も大陸から撤兵しよう。」くらいのことは言って良いのだが。別にこれを言えという訳ではなく、それくらいハル・ノートが出鱈目な内容なのである。
ちなみに米国は1850年代からハワイ侵略を本格化させているのだが、ハワイも日本に助けを求めてきているのである。明治十四年に王女(後に最後の女王となるカラカウアさん)のお婿さんに、「山階宮にきていただきたい」と申し出があったのです。この時には「ハワイ〜ペルシャに至る有色人種連邦の盟主に日本がなってください」などという申し出もありました。さすがに慢性的半島危機と大陸脅威を抱える日本にとっては「清や朝鮮と仲良くできる条件がない」と、婚姻話ともども丁重にお断りしています。米国がいかに非道でも友好国であり、現実の力関係を見るととてもハワイに肩入れして米国と事を構えるなど、考えられない事でしたから。後の大隈内閣はやりそうになりましたが。
以上、お答えとさせていただきます。
こんばんわ。
ハワイのその話は、岡崎久彦先生の『小村寿太郎とその時代』(PHP研究所、1999年)の43頁に載っています。
少しだけなのですが・・・
詳しく知りたい場合は荒俣宏先生が訳した『カラカウア王のニッポン仰天旅行記』(小学館,2000年)が御勧めです。
ではまた。
倉山先生
レスありがとうございます。
相手の立場・利害・状況などを限られた情報で把握しながら、
推定し、物事の本質を見抜く想像力と、
実行可能な良策をタイムリーに遂行していくことが、重要ですね。
現時点で、実行可能かどうか?
実現可能性は高いか?低いか?
得られるパフォーマンスは高いか?低いか?
決断の材料を集めるのにどれくらいの時間とコストがかかるか?
など、様々な要素を勘案して、多面的に意思決定していくことが必要でしょう。
しかし、現在は、マスコミ、国民ともに、
うまくいっていない、ある一面だけをクローズアップして、
批判し、結果論で、「こうすべきだったのではないか」
と、結果がわかっていることに対して、批評だけする、
自分ではトライしない口だけ批評家が多すぎますね。
そのような口だけ批評家に、惑わされず、
一歩一歩確実に前に進んで行きましょう!!
我が皇室とハワイ王朝の婚姻話を調べに、生まれて初めて外交史料館に行った時、最初に接した史料が、「カラカウア国王訪日一件」でしたか。条約原本を見せてもらいました。懐かしい思い出です。
倉山先生、こんばんは。
ハワイの話を詳しく解説いただき、ありがとうございます。
アメリカ人にハワイやアラスカの件は、いくらでも急所になると思いますので
そもそもとしてネイティブアメリカンはどうなんだとか、
アメリカ人への急所攻撃には結構効くと思います。
(知らないアメリカ人も多いのではないでしょうか)
あるとき、日韓関係について「能天気にどうして仲良くできない」のと
気楽に理想論を語るイギリス人に、あくまでジェントルに
「ぜひ参考までに貴国とアイルランドが隣国同士でいかにうまく行ったのか、
説明してほしい」と言ったら黙り込んでしまいました。
倉山先生、こういうときはアイルランドではなく、「どうしてフランスと」と言うべきだったでしょうか?
また、大日本帝国憲法を「当時にしては良くできた」と論評する価値観自身が
元凶とのこと、まさにその通りですね。
元凶というより病巣ですね。
そういう病巣は早く摘出しないと、体内に広がってしまいそうです。
ワイマール憲法の評価私もわかりません。これこそドイツへの陰謀ではないかと感じるほどです。
ヒトラー・ムッソリーニのあたりを調べるにつけ
共産主義の嫌悪感への反応をいかに上手く利用したか
そしてその時憲法があまりにも無力だったことが、分かります。
一方の共産主義自体も、すでにスターリンの時から、空疎な権力の飾りにすぎなくなっているのですが・・・。
憲法講義には直接関係しないかもしれませんが、
ぜひ講義の中で、ワイマール憲法の下で如何に独裁政権が醸成されたのかを
機会があれば教えてください。
よろしくお願い申し上げます。
英国の場合、アイルランドでもフランスでもドイツでもオランダでもベルギーでもスペインでもポルトガルでもノルウェーでも同じかと(笑)。敵か子分しかいないというか。。。
「隣国とは仲良くできないから別の国なのである」と割り切る英国人、「なぜ隣の国と仲良くできないの?」と強迫観念にとり憑かれる日本人。国際人たるもの、英国人の「性格の悪さ」を見習わねばならないであろう。
倉山先生
まさにその通りでして、「イギリス人のお前が言うな、そんなこと」ということでした。
まあ、フランスもそういう意味では、周りが敵ばっかりですよね。
いつもドイツにいじめられるし。
ビスマルクがモルトケを止められなかったから。こうなっちゃったわけですが。
ヨーロッパ人と話をする前に、こういうことを知っているか、いないかは重要でしょうね。