アンチとも信者とも裏切り者とも違う、安倍擁護論

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 あけましておめでとうございます。
 しかし、年末に風雲急を告げる大事件が飛び込んできた。
 また、4日には国会が開かれる。

 私は言論人なので、だれの言論を信じていけばよいのかわからないときに、言論を行うのが仕事だ。
 安保法案騒動の時から顕在化していたが、なぜ「安倍全肯定」と「安倍全否定」のどちらかしかないのか。
 その二つだけは絶対に間違いだろうに。
 正解が何かわからないが、100点と0点の中間にこそ答があるだろうに。
 結局、保守論壇ですらその二択だったことに、現状の混乱があるのだろう。

 日韓合意について。
 はっきり言えば、これ、福田康夫や三木武夫なら、ここまでの騒ぎになろうはずがない。
 彼らにまともな毅然とした外交を求める日本人など誰もいなかったからだ。(むしろ、タカ派を標榜した福田赳夫が日中友好をやったことで保守陣営を落胆させたことを思い出す。)

 ところが、安倍首相は、再起を期す際に、あえて「戦後レジームの脱却」を掲げた。
 もちろん、慰安婦問題も入っている。
 期待させたのだから、支持者がこういう反応をするのは仕方がない。
 一部の安倍支持者の中には、

一、「安倍さんには何か深い考えがあるはずだ」
二、「まだ結果を判定するのは早い」
三、「無条件で安倍を支持しろ」

と述べる論者もいる。

「一」は何の証拠もないので説得力はないし、
「二」は既に破綻している。
 既に、保守分裂は止まらない勢いと化しているし。
 よって、「三」のような態度が、これまで数十年間、慰安婦問題に取り組んできた人たちの怒りに火を注ぐこととなる。

 私も慰安婦問題をそれほど重要と考えてきたわけではないが、それでも「河野談合」という言葉を広めるなど、一躍買ったつもりだ。
 まったく無関心ではなかったし、手伝い戦くらいはした当事者だ。
 今回の日韓合意を受けてこれまで慰安婦問題で努力してきた人たちに「盲目的に安倍を信じよ」とは言えまい。
 繰り返すが、そういう態度は火に油を注ぐだけなので。

 このような状況だからこそ、私は安倍内閣を応援する。
 言論人として、野党の肩書を持つ部外者としてだが。

 では安倍内閣の敵は誰か。
 三つに分けて考える。

一、日韓合意以前から安倍内閣を敵視していた論者(アンチ)
二、日韓合意以前から盲目的な安倍支持を訴えている論者(信者)
三、日韓以後に安倍敵視を明確にした論者(裏切り者)

 まず、アンチ。日韓合意以前から安倍内閣を敵視していた論者に対して。
 彼らはサヨク(リベラル)だけではない。
 保守を標榜する勢力にもいる。
 この人たちに申しあげたいことは一つ。
 代わりは誰だ?
 安倍首相を批判するのに代案が無いのでは話にならない。
 彼らが如何に安倍内閣の非をならそうが、代案が無いのならそれでもしかたがないとしかいいようがない。
 現状を批判するのに代案が無ければ現状維持しか方策は無いからだ。
 これは安倍内閣が正しいかどうかではなく、批判者の責任だ。

 次に、信者。日韓合意以前から盲目的な安倍支持を訴えている論者に対して。
 申し訳ないが、この状況で「信じろ」「支持しろ」と言われても無理。
 韓国以外の国に飛び火し、保守勢力も分裂している。
 この結果に対し、明確な責任を表明しない限り無理。
 「いいか悪いかわからないから支持しよう」では、保守の最低半分は納得しない。
 盲目的な支持を強いる姿勢こそが保守分断に拍車をかける。
 現に第一次内閣の時がそうだった。
 第一次内閣でブッシュが日韓妥協を強いた時にデモをした団体を調べてみればよい。
 前回は産経こそ最後まで安倍支持をしたが、今回は片足を抜いている。
 楽観できる要素など何もない。
 特に、総裁選直後に「これで三年は安泰だ」と述べた論者は、なぜそんな強い政権がこんな体たらくになったのかを事実に基づいて述べるべきだ。

 最後に、裏切り者。日韓合意以後に安倍敵視を明確にした論者。
 昨日まで「安倍で商売をしていた奴」は論外。
 単なる卑怯者なので語るに値しない。
 さらにその上で、総裁選直後に「これで三年は安泰だ」と述べた論者は、なぜそんな強い政権がこんな体たらくになったのかを事実に基づいて述べるべきだ。
 また、昨日まで自分が支持してきた責任も語ってもらわねばならない。

 以上の三つの立場を排撃する立場で、それでも私はあえて安倍内閣を応援する。
 理由は一つ。

 よりマシな代わる人がいないから。
 
 政治とは理想を求めるものではなく、よりマシな現実を求めて行うもの。
 だからよりよい代案が無い限り、現状を支持するしかない。
 ただし支持と言っても、盲目的な支持ではなく、批判すべきはする。
 失敗は失敗だとはっきり言う。
 そういう応援の仕方をする。
 よって、以上の三つのすべての立場と一線を画する言論を行う。
 アンチとも信者とも裏切り者とも違う、安倍擁護論として。