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軍国主義はファシズムの宿敵

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 靖国神社への罵倒語として、しばしば軍国主義の象徴などと称される。ではそう思っている人に聞くが、軍国主義こそファシズムの宿敵である原理をご存知か?

 「全体主義」「国家主義」「軍国主義」「ファシズム」の違い、わかっているのだろうか?全部、大日本帝国への罵倒語として使用されるが、「悪いもの」くらいの定義しかないから怖い。

 「全体主義」とは、「異論を許さない体制」のことである。普通は独裁体制のことをさすが、ドイツのような「民主主義の否定は許さない」なども一種の全体主義と言えるのである。革命とか無政府状態を認めない国は実は「全体主義」になりうるのである。国民の自由への制約が、緩いか厳しいかだけであって。

 「国家主義」とは「国家を至上とする価値観」である。外国の支配を受けない、宗教教団やマフィアや貴族や軍閥など政府の命令に従わない団体が存在しない、ということである。元来、穏健思想である。例えば、フランスではジャン・ボダンの理想に基づいてリシュリューが実行した。

 「軍国主義」とは「軍事を国策の最優先事項とする状態」のことである。「国家主義」は一度はこの状態を経験するものである。日本だと、元寇の際がそうであると言える。近代だと日露戦争に至る富国強兵の過程などがそうであることに異論はあるまい。昭和期は?まともな統一的な国策もないのに「軍国主義」になれるはずがない。せいぜい「軍国主義的傾向」、くらいであろう。「軍国主義モドキ」でも良いが。まあ「軍国主義」を目指していたことはわかるが。

 「ファシズム」とは「党が国家の上位にある体制」である。イタリアファシスタ党もナチスもそうである。同時期の日本では「一国一党」と言った。だから、大政翼賛会を作るために全政党が解散したときに、グルー駐日アメリカ大使は「政党がひとつもなくなってファシズムはできない状態になった」と日記に記しているのである。一つの党が、愛国心や軍国主義を鼓吹しながら個人崇拝を強要しつつ国家を乗っ取ろうとする時、必ず立ちはだかるのが軍である。ドイツ国防軍はヒトラーに対して最後まで抵抗し続けたのはこの原理による。

 「ファシズム」と「国家主義」「軍国主義」は原理的に両立できないのである。

 ではなぜ日本の学者は世界的に共通の「ファシズム」の定義をごまかすのか?(ほんとにわかっていない御仁は別として)

 共産党がファシズムだからである。スターリンや毛沢東がヒトラーと同じような体制で、共産党は国家の政府をのっとり、秘密警察とともに軍と対立している、などとは言いたくないのである。しかし、事実はそうなのである。ソ連では共産党と赤軍とKGBが三極対立していたではないか。

 大日本帝国では最後まで憲法が生きていたから、ファシズムにはなりえないのである。また、軍国主義になりきれなかった日本に、軍国主義の象徴も何もなかろう。

 以上の原理と事実を踏まえた上で。「靖国を軍国主義の象徴」とのたまう方には確認する。

「では靖国神社をアンチファシズムの拠点だとあなたはお認めになりましたね。大日本帝国がナチスドイツやソ連邦や中華人民共和国とはまったく違った体制の国家であったとお認めになることになりますがよろしいですね。実際に靖国が軍国主義の象徴であったかどうかは、あなたが靖国をアンチファシズムの象徴であったとお認めになったと確認できてからお答えします。はっきり宣言してください。靖国神社のおかげで日本はナチスやソ連や中共のような危険極まりないファシズムにならなかったと。」

 このおちょくり術、どうぞご自由にお使いください。たいていの相手は沈黙します。