「大学では教えられない歴史講義」カテゴリーアーカイブ

ランニング姿で接客

LINEで送る
Pocket

「特定の人の既得権益」に関しては追々解き明かすとして、本題は『官僚たちの夏』の風越信吾である。お断りしておくが史実の佐橋滋ではない。あくまで、読書感想文としての『官僚たちの夏』、城山三郎が理想の官僚として訴えたかった風越信吾である。まずはそこである。
最も入手しやすい文庫本である、城山三郎『官僚たちの夏』(新潮文庫、平成20年)に従い、一つ一つ見ていこう。ちなみに昭和五十年が初版であるが(原題は『通産官僚たちの夏』)、この文庫本がなんと50刷!である。

問題その1 とりあえず、社会人として礼儀知らずなのである。
自宅で、静養先で、裸でいるのは良しとしよう。他人に、しかも女性から見える場所でそのような格好でいるのは良くないと思われる方もいるだろうが、そこは百歩譲ろう。
問題は、仕事先ででもほとんど同じなのである。

 冒頭の5頁からして 上着もネクタイも着けずに仕事をしている。主人公の性格描写としては見事である。ただし、上司や同僚はクーラーが無くても耐えているが、彼はお構い無しである。

 175頁では、来客である大手銀行の頭取をランニング姿で応接する。しかも待たせた挙句に、絵葉書を眺めており、話は上の空である。当然、この頭取は激怒するのであるが、
「総理さえも、大事な客分のように、部屋の入り口まで送り迎えしてくれる。それなのに、一局長の分際で、この男は―」との心の声は何を描かんとしているのだろうか。頭取の方が民間人の分際で無礼だ、とでも言いたいのだろうか。
 風越の明け透けな性格か、大銀行の頭取にも低頭しない国士風官僚であろうか。

サラリーマンの皆さん。同じ態度をお客に対してできますか?
少なくとも私にはそんな勇気はない・・・。

 

 相手が誰であれ最低限の礼儀作法は必要だと思うのだが、政権与党と仲が良い銀行の頭取相手には、何をやっても良いとでも言うのだろうか。さすがにまずいのではないか?(つづく)