今次解散を政治論と立憲主義の観点から読み解く

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結論:信者の解散賛成論もアンチの違憲論も、どちらもバカ。

安倍首相が突如衆議院解散を決意したということで、相変わらず「安倍アンチ」と「安倍信者」が、「安倍がすべて悪い」と「いや、安倍さんのやることはすべて正しい」と次元が低すぎる論争をしている。

なぜ次元が低いか。この議論では、0点と100点の二択しかないから。そんなはず、ないだろ?

私見を述べる。

まずは解散の理由に関して。これは政治論から。

理由一 増税(して用途をバラマキに)

何もかもが間違っている。信者は何を理由に擁護するのか。

理由二 北朝鮮への圧力

総論として反対する勢力が国会の多数とは思えない。では、具体的に何をするのか。戦争準備でもするのか。

これは安部内閣の側に立った政局論になるが、ここで解散するなら核武装くらいでないと割に合わないではないか。

理由三 憲法改正(して自衛隊を明記)

「ワシは死ぬまでに憲法九条が変わる所を見たいんじゃあ」という老人の妄想につき合わされてたまるか。憲法典を変えなくてもできることをやらない奴の改憲論など犬の糞にもならん。

以上、安倍内閣御用新聞と目されている読売新聞で掲げられている解散理由のいずれにも賛成できない。だいたい、安倍首相を応援している信者の連中の言っていること、すべてが妄想なのでついていけない。

私が今の時期の解散に賛成できない理由をもう一つ挙げる。

来年3月に日銀正副総裁人事があるが、その時に解散権を手放していてよいのか?この点で説得力のある言及が欲しいどころか、信者諸君、誰も言及すらしていない。

では、今回の解散が憲法違反であると言う意見が出ている。これに関しては立憲主義の観点から述べる。

最初に。今回の解散は合憲か違憲か。明らかに合憲である。違憲だとすると日本国憲法の何条に違反するのか。

そもそも、これまで日本国憲法での衆議院解散は7条に基づいて行われてきた。それを何をいまさら違憲とするのか。解釈変更でもするのか?それこそ、護憲派の連中が批判してきた解釈改憲であり、立憲主義の蹂躙ではないか。

では立憲か非立憲か。首相が何の制約も無く好き勝手に自分の都合の良いときに解散する。立憲である。
なぜか。
そのような解散に文句があれば、総選挙で敗北させればよいのである。立憲主義とは総選挙によって示された民意によって多数を形成する政治だ。

私は今回の解散に関して、政治論では反対だが、憲法論としては合憲であり立憲であると思う。

イギリス憲法を中途半端にかじって、「世界の趨勢は首相の自由な解散権を縛る方向にある」と主張する論者もいる。しかし、いずれの運用にしても問題が無い訳ないのだ。

場合一 解散権は首相の専管事項

→首相が勝てると思う時に解散。

場合二 解散は与野党合意で

→現職与野党の談合を正当化。

場合三 不信任された場合のみ解散

→行政と立法がねじれた場合、停滞。

かつ、与野党ともに近代政党であることを前提。

 

下記の本で日英独米仏の立憲主義を比較した。勉強されたし。

 

 

 

 

「今次解散を政治論と立憲主義の観点から読み解く」への10件のフィードバック

  1. 朝日新聞が興味深い記事を配信していました。
    低所得の割合、40歳代世帯は増加傾向 高齢者では減少
    http://www.asahi.com/articles/ASK9P6HT8K9PUTFK01M.html
    >日本の所得の再分配機能が、「現役世代に比べ、高齢者世代に手厚い構造になっている」と分析。今後、世代や世帯ごとにきめ細かに再分配政策を考えるとともに、現役世代の所得向上支援や全世代型の社会保障への転換が必要と指摘している。

    今回の解散は、消費税の使い道を借金返済から社会保障費へ代えるためにやるという話ですが、朝日によれば、その社会保障費を所管している厚生省が「現役世代の所得向上支援」が必要だと主張しているそうです。

    さて、「現役世代の所得向上」の一番の障害はなんでしょうか。そう、消費増税による景気の低迷です。

    ここに来て、消費増税の大義にほころびが出てきたのではないかと。

  2. 与野党合意で解散とか、今の国会見てたらうまくいきそうにないな笑

    北の有事に備えて今のうちに解散ってのはわからなくはないけど、そのために増税を(用途替えまでして)ほぼ確定してしまうとか、日本経済にとどめさすつもりか?
    増税の影響を上回る財出なんて見込みないし、そんなことできるなら軍事費2%やってみろ

    とにかく、解散はしたけりゃすればいいけど、増税だけはダメだ
    せっかく構造失業率に近づいてきてるというのに

    安倍さん以外にケインズ経済理解してる宰相候補いないしなー

  3. トランプが「俺も対中国、北朝鮮で孤軍奮闘して踏ん張ってるんだから日本も防衛費を2パーセント位しろよ」と言ってるのと同じく、
    安倍さんだって「俺も財務省と戦って孤軍奮闘して踏ん張ってるんだから国民も消費増税反対なら、思うだけじゃなく、ちゃんと『声』を上げて応援してくれよ」と言いたいんじゃないかなと思います。アンケートで質問されたときだけブツクサ愚痴を言う今までのサイレントマジョリティーじゃダメだなと最近よく思います。

  4. 倉山先生、こんにちは。
    今一番ご教示頂きたかった内容、嬉しいです。

    >私が今の時期の解散に賛成できない理由をもう一つ挙げる。

    >来年3月に日銀正副総裁人事があるが、
    >その時に解散権を手放していてよいのか?
    >この点で説得力のある言及が欲しいどころか、
    >信者諸君、誰も言及すらしていない。

     経済を「ゼニカネの問題」と軽んずる保守の悪いクセですよね。
     私の高校時代の恩師は、保守の社会科教諭でした。勿論、当時は気付いていませんでしたが。「経済を知らずして、国家安全保障を語るなかれ」と教えて下さいました。20年も前の話になります。人気取りで稼いでいる保守(?)言論人なんかより、草の根で頑張っている高校教諭の方がよっぽど見識があります。及ばずながらも保守として活動する事で、少しでも恩返しが出来ればと思っております。

  5. 先生の書籍はすべて買って読もうと頑張っておりますが、日本国憲法を改正できない8つの理由の4回目の読み返し中です。
    頑張って理解をしたいです。
    他の御本も発売されたら直ぐに買っています。

    で、今回のコラムで、わからないので教えていただきたいのですが来年3月の日銀副総裁の人事が解散権とどの様な繋がりがあるのか教えていただけませんでしょうか。

    おそらく呆れてしまったと思いますが、先生を尊敬して一生懸命理解したいと思いますのでよろしくお願いします。

  6. じゃあ、安部さん以外誰が良いのでしょうか?
    全ての安部さんの政策に賛成はしてないけど、他に変わる人が全く見当たりません。

    私も増税は反対ですが、財務省との擦り合わせなどもあるでしょうし、少なくとも、マクロ経済を理解してそちらの方向へ進めていく努力をしてくれる政治家は応援したいです。
    実際に政治をしないで外から偉そうに言ってる人間はどうかと思います。
    少なくとも倉山さんより安部さんの方が日本の為に頑張ってくれているのではないでしょうか?

    意見を言うのは良いとは思いますが、偉そうにすると端から見ていて痛々しい人にしか思えなく、印象もとても悪いです。

  7. 消費増税については再来年に参院選があるので
    そこでひっくり返す算段の模様です。
    早速小池さんに突かれちゃってますが。

    朝鮮半島情勢についてはここで解散することで
    何かを為すというより、ここで解散しておかないと
    大変な時期に政治空白を作ることになりかねない
    という考えのようですね。

    憲法については改憲案の発議とともに解散した方が
    有利なはずなので、改正できなくても仕方がないと
    思っているんじゃないでしょうか?

    日銀人事に関しては、もし今解散していなければ
    来年の3月に解散をちらつかせることができるような
    朝鮮半島情勢であって欲しいです。

  8. >じゃあ、安部さん以外誰が良いのでしょうか?

    「そろそろそういうのやめない?」
    と、思い始めている自分がいる。
    なんか思考停止に見えてしかたないんだよね。そういうの。

    だから今回は、「自分の選挙区では」
    自民じゃなくて民進に入れようとしている自分がいる。
    さすがに共産はなぁ…。希望も維新もたぶんいないだろうし。

    ほら、こういうこと書くと脊髄反射するんだろ?
    だから保守とか言ってる奴等って、
    ほんとはあんまり好きじゃないんだよな。
    ええ、そうですよ。こちとらただの愚民ですけどナニカ?

    そんなことにはならないと思うけど、
    「もしそれで下野したらどうするんだーヽ(`Д´)ノニホンハドウナル!!」
    って言うのかね。知るかそんなもん。
    安倍さん、つーか岡本ゴムに文句言ってくれ。じゃなかった、
    シゲーリンとベリヤノだったっけ?

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