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TBS版「官僚たちの夏」は来ない 第二回 後編

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さて、番組での通産官僚(の中の主人公の一派)の意識はどうか。
「民間に任せると共倒れになる」
「企業や国民を守るという通産省の大義」
「日本の産業は保護が必要」
「我々は企業を指導する立場にいる」

というパターナリズム(父親的温情主義)的台詞のオンパレードなのである。

要するに、統制経済万歳! なのである。

民間企業は、通産省に黙ってついていけば良いのである。

そらぁ、予言者様だからなぁ。

 主人公の風越によれば、
「自由経済とは誰も舵をとらないシステム」
「日本独自の経済システムが必要」
なのだそうである。

 本気でこんなことを考えているのなら、経済学の初歩を無視した議論である。
 もしくは、近代経済学すべてをひっくり返す、コペルニクス的転回であろう。

 アダム・スミスを「自由放任」と批判する論者は多いが、それも比較の問題である。スミスのどの著書を読んで構わないが、「政府は何もするな」とは一言も言っていないのである。「政府はできるだけ何もするな」「過度の介入は良くない」と言っているだけである。
 ちなみに「過度の介入」とは統制経済のことであり、その究極が社会主義である。

 もうひとつ。「日本独自の経済システム」など考え付けたら、間違いなくノーベル経済学賞ものであろう。というのは、「日本独自の経営システム」ならわかる。経営とは人間を直に相手にするからである。その国の風土が大いに関係があるからである。
 しかし、経済学とは法則の学問であり、そのシステムはその国の政治に左右されるとしても、経済そのものに国籍などないのである。
 例えば、「日本独自の数学」を想像してみよう。
 しかし、 「1+1=2」を「一足す一は二」と表記しても、中身は同じである。
同様に、「日本独自の医学」「日本独自の生物学」「日本独自の物理学」・・・などとあっても、どこの国の人であろうと人体の構造は変わらないし、その土地に行けばその土地独自の生物がいるという知識も共有できるし、米ソがいかにイデオロギーで対立しようがロケットを飛ばす原理は同じである。
 もちろん、極めて稀に、アインシュタインが相対性理論によってユークリッド幾何学とは別の学問体系を打ち立てた、などという事例もある。

 たぶん、主人公の風越信吾さんは、アインシュタイン並の天才で
「日本独自の経済システム」を打ち立ててくれるのだろう。
 本当にできるのなら楽しみである。

 今頃、長期不況も格差社会も無くなっているに違いない。