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TBS版 『官僚たちの夏』は来ない 第三回補足

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 ある講演会での話題である。現在、中華人民共和国の関心は、経済成長と一党独裁の維持だそうである。そこまではわかるとして、ある国を官僚統制の模範として研究しているらしい。
それが日本のことらしい。
 中国共産党から見れば、戦後の日本は成功した社会主義国家に見えるだろう。というかそのように見たいというのが真相か。
 確かにこの『官僚たちの夏』を見ていたら、そんな気になるだろう。

 あえて強調する。
TBSの『官僚たちの夏』は社会主義礼賛番組である。
 さらに、泥をかぶる真の愛国者である池田勇人が敵役になるということならば、
反日ドラマとしか言いようがない。

 風越を理想の官僚として描こうとするなら、TBSが美化しているのは
官僚の官僚による官僚の自己満足の為の統制経済である。
 国民生活は、特権官僚が身勝手に思い描く理想に従うべきである、と言われているようにしか思えないのである。

 実は最終回あたりで「担当局長として一人で泥をかぶった玉木こそ偉い!風越は単なる勘違いだ」などという大どんでん返しが待っているのであろうか?

 風越殿、確かに動機が正しい愛国者として描かれている。
 その点、もはや戦前の青年将校である。

 だが、その当の青年将校からして、
反天皇・反日本の社会主義者が多かった
という事実は忘れてはなるまい。
 特に、青年将校の理論的指導者であった北一輝などは、宣言さえしている。
 満洲事変以後、宮中の高官たちが脅えたのは、自分達だけでなく、
天皇陛下に対する不敬極まりない怪文書や噂をばら撒く、過激派青年将校たちであった。

 風越信吾の理想は社会主義的官僚統制国家である。
 池田勇人はアメリカについて行きながらも日本の自立を模索する現実主義者である。
 彼らの共存はありえないのである。「立場が異なってもお互いに日本のことを考えていた」などという次元の問題ではない。
 

 さあ、TBSがどのような描き方をするのか。実に楽しみである。

追記
「日本は実は社会主義国家である」とか、「通産省の統制経済的産業保護が日本の繁栄を招いた」などは別に目新しい論点ではない。下記の参考文献を参照。

参考文献
 ダグラス・M.ケンリック『なぜ“共産主義"が日本で成功したのか』(飯倉健次・訳、講談社、一九九一年)
チャーマンズ・ジョンソン『通産省と日本の奇跡』(矢野俊比古・監訳、TBSブリタニカ、一九八二年)