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TBS版「官僚たちの夏」は来ない 第四回

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 この『官僚たちの夏』は「国家を思う熱い官僚たちが、悪戦苦闘しながらも日本を復興そして豊かにしていく物語」だそうである。

 主人公は、玉木局長か?今回、家族の身に危険が及んでも屈せずに頑張ったし。

 風越信吾は?もはや悪役ですらない、駄々っ子と化していた。。。

 ついでに、風越の部下たちは相変わらずの統制派官僚ぶりを炸裂させていた。「大手と合併して(=吸収されて)、労働者の雇用を守れ」など一民間企業の経営問題にまで口を出している。だったら、公務員としての身分保障がある安全な立場を捨てて、その会社に就職してリスクをとれば良いではないか。自分だけ安全地帯に居て、実際にリスクを負う人たちにあれこれ指図するというのが、卑怯極まりない態度である。ちなみにその際の台詞。

「非常時です!」

 ちなみに、統制派官僚とは、戦前戦中にかけて

「あいつらアカ(共産主義者)ではないか」と疑われていた人々です。実際、企画院事件で検挙された官僚たち、

 戦後には社会党左派の重鎮連中だし。

 さて、今回は日米繊維交渉の後編である。

 要するに、アメリカの貿易自由化圧力から国内産業を守ろうとする池内大臣(池田勇人)と玉木繊維局長に対し、繊維業界を守ろうとする風越一派が立ちはだかる、という話である。あまつさえ風越は、池内のライバルである須藤大蔵大臣(佐藤栄作がモデル)の元に駆け込むことから、双方が激しい多数派工作を展開する。

 掟破りも甚だしい。風越局長、ここまであからさまに大臣に喧嘩を売っている以上、辞表の一つでも用意しているのかと思いきや、そういう覚悟はないらしい。

 一方の玉木は業界団体のデモに自宅まで押し寄せられて脅迫されながらも、大臣の「憎まれ役を引き受けてくれ」との命令を甘受する。

 ちなみに昭和初期なら、暗殺されかねない危険な状況だが、玉木はひるまずに説得を続ける。確かに熱い官僚である。こちらは悲壮な覚悟で仕事に挑んでいる。

 局長会議(省議)は白熱するが、そこへ大臣自らが乗り込み、議論に参加する。玉木のよき理解者である。そして会議は、自由化全面拒否を頑強に主張する風越を大臣が次々と妥協案を示して説得するという有様である。ちなみに大臣、スケジュールの都合で早めに切り上げようとする意見を退け、

「この会議はどんな予定よりも重要だ。」とすべての予定をキャンセルさせ、泊り込みの体勢に入るほどの熱のいれようである。大臣もまた熱い。

 議論は当然平行線なのだが、風越はあらゆる妥協を全面的に拒否し、延々と同じ主張を繰り返し続ける。ちなみに大臣や玉木も風越の言いたいことはわかった上で「やむなし」と言っているに過ぎないのだが、風越に歩み寄る気はまったくない。

 最後は以下のようなやり取り。

風越「あんたは脅しをかけて意見を押し付けているだけだ」

池内「確かにその通りだ。しかし俺も国を背負っている」

 前回に引き続き、池内は泥をかぶっているわけである。それでも風越は「アメリカが…」などと納得していなかったが。

 それに対する池内の一言、政治家の鑑である。

「悪く思うな。これからも国家のためにお前が必要だ」

 TBSよありがとう!我らが池田勇人をここまで格好良く描いていくれた。と思ったら…

 大どんでん返し。実は、池内(池田)は政敵の須藤(佐藤)の資金源を絶ちたかったがてまだったとさ。。。

 え?!単なる私利私欲?

 この一件、史実でもあるのだが、それで単純に一面的にすべてを語るのは如何なものか。

 大前提。

一、池田と佐藤は、常に対立と妥協を繰り広げている。確かに二人(とその派閥)は激しく角逐しているのだが、池田内閣でも佐藤内閣でも実現には相手の協力を必要としているのである。

二、相手の派閥への攻撃はお互い様。池田が単純な私利私欲で権力を行使した訳ではないし、佐藤も一方的にやられっぱなしのヤワな政治家ではない。

 このドラマ、いっそ風越を悪役として描いたほうが、無理がないのでは?